維持管理に関する最近の取組事例

トンネル維持管理に関する最近の取組事例

2024年8月29日更新

一般社団法人日本トンネル技術協会


1、主旨
 社会インフラの高経年化に伴い、国、自治体、研究機関、事業者、建設業、建設コンルタント、メーカー等では、維持管理業務の効率化や点検の精度向上を目的として、ICTを活用した業務変革やロボット等の開発・導入に取り組んでいる。
 本会技術委員会保守管理小委員会では、委員や維持管理業務の従事者による情報提供により、これらの取り組み内容に関する情報の共有を行っている。トンネルの維持管理に資する技術の開発・導入の促進および、維持管理業務の効率化や質的向上を目的として、これらの情報を掲載する。

2、最近の取組事例

情報提供
年月

名称(名称クリック詳細表示)

提供元

トンネルの属性

2019.07 レーザー打音による覆工内部損傷検知技術 ㈱建設技術研究所、(国研)量子科学技術研究機構、計測検査㈱、㈱フォトンラボ 道路
2019.07 社会インフラ画像診断「ひびみっけ」 富士フイルム㈱
2020.01 タブレット端末を活用したコンクリート構造物のはく落予測ツール (公財)鉄道総合技術研究所 属性に限らず適用可能
2020.07 TCI(トンネルひび割れ指数)を活用した覆工点検の効率化 東日本高速道路㈱ 高速道路
2021.04 新幹線用トンネル覆工表面撮影車 東日本旅客鉄道㈱ 鉄道
2021.07 新技術導入促進等について 国土交通省(道路局国道・技術課技術企画室) 道路
2021.07 走行型高速3Dトンネル点検システムMIMM-R(ミーム・アール) パシフィックコンサルタンツ㈱ 道路、鉄道
2021.10 鉄道版インフラドクター 東急㈱,首都高速道路㈱,首都高技術㈱ 鉄道
2022.02 トンネルの診断支援システム構築に向けた取組み (国研)土木研究所 道路
2022.06 浮体による通水中の水路トンネル点検装置の開発 東京電力HD(株) 水路
2022.10 構造物維持管理システム 東京地下鉄(株) 鉄道
2023.07 ブレットによるトンネル検査の効率化に関する取組み 九州旅客鉄道(株) 鉄道
2023.11 トンネル立坑での調査事例について Calta(株) 鉄道
2024.08 電磁波探査ドローンによる覆工探査技術 (株)ウオールナット 鉄道・道路
2024.10 AIを用いた打音検査解析によるコンクリートの診断システム 応用地質(株) 鉄道・道路
2025.02 走行型近赤外線撮影によるSfM三次元画像解析システム 国際航業 (株) 道路

新幹線用トンネル覆工表面撮影車/東日本旅客鉄道(株)/鉄道

<概要説明>
トンネル検査において、覆工表面のひび割れ変状を正確に記録することは、既存変状の進行性や新規変状を把握するために重要です。
本頁では、トンネル覆工表面の変状を短時間で正確に把握することを目的にJR東日本で活用されているトンネル覆工表面撮影車に関する技術を紹介します。
 
<開発・導入の背景>
■従来の課題
JR東日本では、軌道上を走行しながら覆工表面を連続的に撮影可能な覆工表面撮影車を保有しており、これにより撮影された画像を元に変状展開図の作成を行っている。
従来技術の課題は次の3つ。
(1)取得データの解像度
視認可能なひび割れ幅は概ね1~2mm程度であり、ひび割れ抽出精度の向上のため解像度向上が必要
(2)計測速度
8km/h程度で計測しており、計測周期は新幹線で概ね3~4年要する。トンネルの目視検査の周期に合わせて2年周期でデータ取得ができる速度が必要
(3)変状展開図作成の省力化
展開図の作成のために撮影画像を人の目で確認する必要があり、省力化のため自動抽出が望まれる
■新たに導入した技術の概要
2020年に新型覆工表面撮影車を開発した。レーザーとエリアカメラにより、2次元(画像)・3次元(凹凸)のデータを同時に取得可能な光切断方式を採用。
(1)高解像度のデータを取得、幅0.5mm程度のひび割れまで視認可能
(2)計測速度は従来の2倍程度の20km/hに向上
(3) AI画像解析によるひび割れの自動抽出の実装に向けて検討中(2023年○月現在)
<導入効果>
・変状展開図作成の精度向上により、これまで以上に精度の高い検査が期待できる。
・計測速度向上により、計測作業が効率化された。
<今後の課題>
ひび割れの自動抽出の実装に向けて取り組んでおり、トンネル展開図作成の省力化の検討を進めている。
<参考文献>
・久保木利明、八嶋宏幸:新型トンネル覆工表面撮影車の開発と導入、検査技術、2022年4月
https://www.jreast.co.jp/press/2019/20200116_ho03.pdf

TCI(トンネルひび割れ指数)を活用した覆工点検の効率化/東日本高速道路㈱/高速道路

<概要説明>
高速道路トンネル覆工の詳細点検は、5年ごとに実施し、覆工画像撮影(詳細点検A)したのち全面近接目視+全面打音(詳細点検B)を基本としている。詳細点検2回目以降は、覆工ひび割れ展開図より得られるひび割れ評価点を用いて、全面近接目視+全面打音の実施の有無を区分している。このため、精度が高く客観的なひび割れ評価点を算出できるように、TCIを導入し点検の効率化を図っている。

<開発・導入の背景>
■従来の課題
従来は、目視により手書きでひび割れ展開図を作成し、ひび割れ幅や長さをもとに評価点を算出しており、時間をかなり要することと点検者の技能によるところがあった。
■新たに導入した技術の概要
TCIは、クラックテンソルの考えを導入したもので、ひび割れの幅、長さ、方向性をひとつの数値化された評価尺度として利用できるものである。また、5年ごとにその数値の変化を見ることで、ひび割れの進行性の有無、大小が把握可能となり、健全度評価の判定に使うことができる。
<導入効果>
覆工画像撮影をもとにひび割れ展開図を作成することで、点検精度が向上すること、TCIは電子化されたひび割れ展開図により自動的に算出されるので、客観的で点検者の技能に左右されない評価点が得られる。
<今後の課題>
TCIの数値と覆工の状態の関係性は、点検の実績を積み重ね常に見直しを図っていく必要がある。また、高速道路トンネルでの点検実績をもとに適用を図っているところであり、他機関のトンネルへ導入する場合は、数値区分等の設定に留意する必要がある。
<参考文献>
山田隆昭・佐野信夫・馬場弘二・重田佳幸・吉武勇・西村和夫:ひび割れ指数を用いたトンネル覆工コンクリートの健全度評価法の構築 土木学会論文集2008_12

社会インフラ画像診断「ひびみっけ」/富士フイルム株式会社

<概要説明>
ひびみっけは、コンクリート構造物の写真を自動的に合成し、ひびわれを自動検出するソフトウェアサービス。
トンネル検査において従来は「1.ひびわれを見つける」「2.ひびわれをチョーキングしスケッチする」「3.スケッチした結果をCAD化する」という作業を行っていたが、写真から自動的にAIがひびわれを検出しCAD化する事で効率化を目的としている。また、本技術は打音点検車の後から損傷をスケッチする人員を写真撮影に変える事で導入できるため、従来点検から大幅にワークフローを変える必要がない。

<開発・導入の背景>
■従来の課題
(1)画像による記録
・従来、一般的なデジタル一眼カメラでトンネル覆工表面を撮影し変状展開図の作成を行おうとしても撮影した画像を合成する際局面の画像のため、画像に歪みが生じしていた。
(2)ひびわれの検出
・従来、トンネル点検におけるコンクリートのひびわれの検出・記録は、人による近接目視点検の記録で対応していた。
■新たに導入した技術の概要
2018年より「ひびみっけ」サービスを開始し、トンネル覆工表面のような局面の画像合成を歪みなく行う技術とAIによるひびわれ検出する技術の提供を開始した。
(1)画像合成
画像合成するために、当社の撮影ガイドラインに示された撮影条件を参考にトンネル中心部から側面から天面に向けて1枚ずつ画像の撮影を行っていく。また、撮影の際は各画像のオーバーラップを20%程度取る必要がある。
撮影した画像をスパン毎にフォルダに纏めて「ひびみっけ」サービスにアップロードする事でスパン毎の変状展開図が自動的に作成される。
(2)ひびわれ検出
ひびみっけは2018年のサービス開始以来、年に数回ひびわれ検出AIの
バージョンアップを行っている。現在、ひびみっけは1200社以上のユーザーがおり、各ユーザーがアップロードした膨大な枚数の画像を基に学習しているため、常に精度向上している。ユーザーは常に最新のAIで画像からひびわれ検出を行うことが可能。
<導入効果>
・一般的なデジタル一眼カメラからも変状展開図作成が自動で作成可能になった。
・デジタル一眼カメラから撮影することでひびわれを自動的に検出・CAD化が可能になり、作業が効率化された。
<今後の課題>
・ひびみっけユーザーの要望対応を随時進めている。
<参考文献>
富士フイルム株式会社 ひびみっけHP
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/inspection/infraservice/hibimik…

レーザー打音による覆工内部損傷検知技術/㈱建設技術研究所,(国研)量子科学技術研究機構,計測検査㈱, ㈱フォトンラボ/道路

<概要説明>
覆工コンクリート表面を高出力パルスレーザーで打音し、表面の微小変位をレーザー干渉計を利用したドップラー振動計により遠隔で計測することにより、うき・はく離の状態を把握する技術です。人力打音の代替となる赤外線パルスレーザーによる衝撃と微小振動をレーザー計測する技術を一体化し、打音間隔や打音速度を制御する技術とともに検査車両に搭載することで人力打音検査に代替するとともに、従来は検査員の感覚に頼っていた判定、診断プロセスを可視化することが可能となりました。

<開発・導入の背景>
■従来の課題
従来の打音検査は検査員の感覚に頼る点検技術であり、点検員の力量の平準化、熟練点検員の不足といった課題がありました。近い将来、増大する道路トンネルの定期点検、臨時点検の需要に対して熟練点検員の不足が顕在化し、定期点検の安定的な実施に支障となる課題がありました。
■新たに導入した技術の概要
レーザー打音はハンマー打音検査を完全に機械化することにより点検員の力量に依存しない覆工打音検査を実現します。さらに苦汁作業であった打音検査の作業環境を大幅に改善します。また、点検記録は完全に可視化され、電子データで記録することが可能になり、前回点検との比較による客観性の高い比較を可能にします。
また、レーザー打音検査の効果を高めるスクリーニング技術、診断技術も併せて開発しており、これらと組み合わせることにより、効率的で客観性の高い覆工打音検査を実現します。
<導入効果>
・レーザー打音検査の導入により、点検員の力量に依存しない打音検査の客観性を確立できた。
・レーザー打音を定期点検に取り入れることにより、打音検査における前回点検との比較が可能になり、進行性を判断できるようになった。
・点検員の高所作業工数の削減に寄与し、熟練点検員不足に対処できるようになる。
<今後の課題>
・計測範囲のスクリーニング技術との併用による作業効率化を進める必要がある。
・さまざまなうき・はく離の状態に対して、適切な状態把握を行う技術を向上させる必要がある。
<参考文献>
①長谷川登, 岡⽥⼤, 近藤修司, 北村俊幸, 錦野将元, 坂本勝哉, ⽊暮繁:トンネル覆⼯コンクリートのうき検知を遠隔で⾏うレーザー打⾳検査装置の現状と社会実装について,計測と制御, VOL.60, No11, pp.765-769, 2021.
②⼾本悟史, ⻑⾕川登, 岡⽥⼤, 近藤修司, 北村俊幸, 錦野将元, 中村光:ラスター(格⼦状)スキャン機能を有するレーザー打⾳検査装置を⽤いたトンネル覆⼯コンクリートの診断⽀援技術の⾼度化に関する研究, 構造⼯学論⽂集, Vol.68A, pp.671-684, 2022.
③中村光,⼾本悟史,松永輝,杉⼭⾵雅,三浦泰⼈,辻健⽃:静的破砕剤による各種形態と損傷度を有する模擬腐⾷ひび割れの⽣成法の提案,構造⼯学論⽂集,69A,pp.718-733,2023.
④⻑⾕川 登, 錦野 将元, 岡⽥ ⼤, 近藤 修司, 坂本 勝哉, ⽊暮 繁, 安倍 正道, ⼾本 悟史, 中村 光:ジュルスジュール級パルスレーザーによるインフラ先進診断 -レーザー打⾳法-, レーザー研究, Vol. 51, 9号, 2023, accepted.

構造物維持管理システム/東京地下鉄(株)/鉄道

<概要説明>
東京メトロでは、維持管理業務の効率化及び説明性向上を目的に、土木構造物の総合的な維持管理体制として構造物維持管理システム(MAST)を構築している。本頁では、構造物維持管理システム(MAST)の概要について紹介します。


<開発・導入の背景>
■従来の課題
東京メトロでは、維持管理する土木構造物の多くが建設後50年を超えている。今後、維持管理費の増大、技術者不足や働き方の変化による鉄道利用者の減少など、リソースの確保が厳しくなることが想定されるため、今以上に効率化を図っていく必要がある。また、土木構造物の維持管理についてステークホルダーに対して、客観的に説明できる維持管理方法への移行が重要な課題と捉えている。
■新たに導入した技術の概要
土木構造物の総合的な維持管理体制として、構造物維持管理システム(MAST)を構築した。
①構造物検査システム(MRSI)による記録、②ドローンによる高所の検査
③工務管理システム(MAPS)やBIツールによる検査記録の管理・分析
<導入効果>
①検査業務へのiPad活用により、事前準備及びデータ転記作業の省略、検査結果の迅速な共有が可能となった。
②高所のトンネル検査へのドローン活用により、高所確認が効率化された。
③工務管理システム(MAPS)やBIツール活用により、検査記録の管理分析、検査結果の蓄積・可視化、補修計画作成の効率化及び説明性が向上できた。
<今後の課題>
新技術の導入等、高度化を目指し更なる効率化及び説明性の向上にむけて取り組みを進めている。
<参考文献>
・石川幸宏、東京メトロにおける構造物維持管理システム、土木施工、2022.7

トンネルの診断支援システム構築に向けた取組み/土木研究所/道路

<概要説明>
道路トンネルの老朽化や維持管理業務に従事する技術者の担い手不足といった社会課題を背景に、国立研究開発法人土木研究所では、診断支援システムの構築を核としたトンネルの維持管理の高度化に関する研究に取り組んでいる。参考文献に示す報文にて、①設計・施工時データの維持管理段階への引継ぎ、②トンネルの変状メカニズムの推定等の診断支援、③点検支援技術の精度検証 について、土研におけるこれまでの取組みや今後の展望を報告した。

<開発・導入の背景>
■研究の背景
①トンネルの設計・施工段階で得られる地山性状等に関するデータが、維持管理段階へと確実に引き継がれていない場合がある。
②トンネルの点検・診断において、外力による変状の兆候を見落とすと、通行止めを伴う大規模な対策が必要な状態へと至るおそれがある。
③点検では、精度向上とともに、担い手不足への対応として作業効率の向上が求められている。
■取組みの概要・成果
①施工段階で得られる切羽評価点や計測変位と、維持管理段階における変状の相関を分析し、有意な相関性があることを示した。
②覆工のひび割れ情報から変状の発生原因を推定するチャートをレビューし、ブラッシュアップの方向性を示した。
③トンネル現場で赤外線カメラを搭載した車両を走行させ、覆工のうき・はく離の検出精度の検証試験を行った。目地部での三日月状のうきが検出された。
<今後の課題>
①分析事例を増やし、今後、BIM/CIM等に記録すべき設計・施工時データを提案する。
②トンネルの診断に携わってきた経験豊富な技術者の経験知を整理し、例えばそれらを組み込んだAIを開発する。
③開発が進められている多種多様な点検支援技術について、関係機関と連携して適用性を検討の上、活用を進めていく。
<参考文献>
小泉悠、菊地浩貴、日下敦:トンネルの診断支援システム構築に向けた取組み、土木技術資料、Vol.64、No.4、pp.28-31、2022年4月
https://pwrc.or.jp/shouroku/shouroku_2022.html#h220406

鉄道版インフラドクター/東急(株)、首都高速道路(株)、首都高技術(株)/鉄道

<概要説明>
2023.3.31
レーザースキャナによる3次元点群データと高解像度カメラの画像データを取得、解析することにより、トンネルの特別全般検査を行う

<開発・導入の背景>
■従来の課題
トンネル特別全般検査は、主に終電後に技術者による目視で実施している。現地に仮設足場などを設置し、全ての部位の近接目視を行っており、異常が疑われる箇所は打音調査などを実施しているが、以下の課題がある。
1. 夜間作業などに従事する技術者不足と技術の継承
2. 経験や技量の違いなどによる検査精度のバラつき
3. 検査結果の変状展開図等の作成には多くの人手が必要。検査費用も増加
■新たに導入した技術の概要
3次元点群・カメラ画像データから現地検査前に変状を抽出するなどし、検査業務を効率化する。検査記録等データは電子化され、点群データの位置情報を基にGIS上で管理するシステム
 点群・画像の解析データから浮き・剥離、ひび割れなどを現地の検査前に抽出。異常が疑われる箇所及び打音調査箇所の絞り込みを行う
 点群データの位置情報と上記データから正確で精度の高い検査記録を作成する

<導入効果>
 打音調査などが必要な箇所の絞り込みにより現地の検査期間を短縮
 GISを基に点群データと維持管理データとを連携し効率的に管理する。また検査等の記録が“紙”で保管されている場合には、これを電子化しGIS上で管理する

<今後の課題>
トンネル特別全般検査での導入を行っているが、検査頻度が20年と長く、費用対効果を向上させるため取得した3次元点群・カメラ画像データを有効活用し、他検査や巡視等、他分野へも展開したいと考えている。
<参考文献>

電磁波探査ドローンによる覆工探査技術/(株)ウオールナット/鉄道・道路

<概要説明>
本技術は、覆工天端部において「コンクリート厚、空洞厚、コンクリート表面のうき」をドローンで探査可能な技術である。ドローンに搭載された地中レーダアンテナを覆工天端部に押し当てて時速2km程度で走行させながらデータを取得していく。
搭載するセンサーを替えることで、覆工の厚さ(1m程度)、背面空洞(2m程度)、内部欠陥(t=1.0mm、5cm角以上のうき、発生深度)の探査が可能である。
<開発・導入の背景>
■従来の課題
地中レーダアンテナとデータを記録・制御するコントロール部がケーブルによって繋がっているため、可動範囲に制限があった。また、大掛かりな計測用台車を作成し、人海戦術による探査を行っていたことから、安全面への対策及び、多くの日数と費用が発生していた。
■新たに導入した技術の概要
自社で開発した完全ケーブルレスレーダなので、数種類の周波数のアンテナを所有していることから、目的に合わせた探査が可能となった。
ケーブルレスなので、ドローンに搭載することが可能となり、高所での作業が無くなり、安全面、探査の幅が格段に広がった。
<導入効果>
災害時においては、高所作業車や足場が使えない場所であっても、対応が可能である。
従来型の計測方式と比べて、計測車両、高所作業車、仮設足場等の準備が不要となり、2名での探査が可能なことから、大幅なコスト削減と作業効率の向上が期待される。
<今後の課題>
測線管理や距離情報を整理するのに時間を要している。今後距離計をD-GNSSに改良することで測線管理にかかる時間を短縮させ、一日の作業量増加が期待できる。

AIを用いた打音検査解析によるコンクリートの診断システム/応用地質(株)/道路、鉄道

<概要説明>
トンネル覆工コンクリートは初期欠陥や経年劣化等により、変状が発生するケースがあります。トンネル点検で行う打音検査では、変状箇所周辺などに打音異常箇所がないかを検出します。打音検査は点検員が打診音を聞き変状状況の診断をする定性的な手法であり、客観性の確保が課題です。その解決方法として打音検査結果の定量化と診断支援を行うため、本技術を開発しました。

<開発・導入の背景>
■従来の課題
打音検査は点検員が打診音を聞き、変状状況を診断する定性的な手法であるため、点検員の熟練度による判断の個人差が含まれることから、客観性の確保が課題です。また検査結果を記録しづらく、次回点検時の比較が難しいことも課題です。
■新たに導入した技術の概要
コンクリートの状態把握に伴う打音検査について、打音ハンマーの打撃力波形をAIによって解析し、コンクリートの状態を自動判定する技術です。打音ハンマー(CTS)で打撃を行い、打撃力の波形をグラフ化するとともに「健全」「劣化」「うき・はく離」のを判定し、本体ディスプレイ上にリアルタイムで表示できます。打撃力の波形をAIにて分析し、トンネルの覆工コンクリートにおける状態を自動的に判定するシステムです。

<導入効果>
点検員の熟練度に関係なく、同等な検査結果を得ることができます。
打音検査結果の定量化ができます。
検査結果(打撃力の波形)を記録することができます。
<今後の課題>
材質、構造の異なる部材への適用や打音位置の特定(ポジショニング)に取組む予定です。
<参考文献>
性能カタログ
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/inspection-support/pdf/c/TN020021.pdf

走行型近赤外線撮影によるSfM三次元画像解析システム/国際航業 (株)/道路

<概要説明>
本システムは、煤けたトンネルでも透過性の良い高解像度近赤外線カメラと近赤外線LED照明を移動車両に搭載し、コンクリート覆工の画像を取得する。可視光の照明ではないため、人の目には見えず、一般車両への影響が無い。取得したRAW画像は、SfM解析(Structure from Motion:複数の画像からカメラの位置・姿勢を推定し対象物を3次元的に復元する写真測量の技術)によりシームレスに接合し、オルソフォトの3Dモデルを作成する。これを平面的な展開画像に加工し、CAD上で変状を抽出し変状展開図を作成する一連のシステムである。

<開発・導入の背景>
■従来の課題
・トンネル点検の変状展開図は人力によるスケッチで実施しており、ひび割れの位置や長さ、漏水や遊離石灰の位置の精度が課題であった。
・点検時において変状の位置を記録するため、現地でのスケッチ作業に時間を要した。
■新たに導入した技術の概要
・本計測機器は、「近赤外線エリアカメラ(400万画素)と近赤外線LED照明」と「各カメラのデータを保存する処理装置(PC)を組み合わせた記録装置」を「移動車両」に一体化させたものである。
・解析技術としてSfM解析により複数枚画像のオーバーラップ部を解析し、3次元モデルを構築する。また標準形状に合わせてTINモデル・点群データを2次元に展開する。

<導入効果>
・トンネル内の変状(ひび割れ、漏水、遊離石灰)などの位置や大きさの把握が容易になると同時に、精度も向上し、時間短縮にもつながる。
・走行型の画像計測が可能となり、交通規制が不要となる。
<今後の課題>
・ひび割れ等の変状はAIによる自動抽出を行っているが、抽出率は70%程度であり、さらなる抽出率の向上が望まれる。
・うき,はく離については、打音検査が必須となるため、画像計測だけでは判断が難しい。
<参考文献>
特になし